2011/07/21

この街


僕は今日まで幸せな街で暮らしてきた。
幸町って住所が好きだった。
番地も、夕方の風景も、とても気に入っていた。
この家に引っ越して約4年、この街に来て6年。

初めてこの街に来た時、大きな梅の木の前に一軒家のスタバがあるその佇まいを見て、
この街に住もうと、絶対そうしようと決めたのだ。


僕はとてもこの街が好きだった。
「街の木」に指定されているのが金木犀というところも好きだった。
なんだか開けた駅前が気に入っていた。
少しダサくて、少し上品なところも好きだった。
帰り道にある、チェーン店じゃない弁当屋を応援していた。
白い制服をチャッキと着て、おじさんがもくもくと作っている、
飾り気のないケーキ屋が物凄く好きだった。
買い物袋を下げて家に帰ることがとてもうれしかった。

春も夏も秋も冬も、
僕はこの街で幸せに暮らした。


今日、僕はここを出る。
この部屋はダンボールで埋まっている。
違う街、少し広くなった部屋。
耳の奥で今までのことがふくらんだり縮んだりする。

すって はく。



今日、新しい街へゆく。


2011/07/10

映画のこと



とてもいい映画を観た。
あくまでも、僕の思ういい映画の話だ。

清々しいような気分。
見上げる、というよりは少し目を瞑ってみる、
そんなような。

きっとまたいつか観ると思う。


2011/07/06


風呂上がりに扇風機にあたるって、
あーとてもいいよ
と思った。

とてもいいよ。


2011/07/05


僕が今ゼミでついている先生は、世界的に有名なのだ。
確かにそうだと思う。
仕事もバリバリしていて、本当に彼しかできないことをやってのけていると思う。
ギリギリ取れるか取れないかのところへボールを投げるのが天才的にうまいらしい。
彼が話せば、皆がどうにか達成したいと思ってしまうし、
そう思わせることが本当にうまいと思う。

それで。
確かに僕はとても凄い人についていて、
そのために大学院へ行った節もあるのだけど、
なんというか、すごく腑に落ちない。
それは自分の態度に、だ。

尊敬と気を遣うことって、僕は違うものだと思う。
気を遣いすぎることはコミュニケーションの上で障害になると思っている。
本音を言わなくなる。様子を窺うようになる。
そうしているうちに、いいと思わない方向へ向いてしまう。
彼の前になると、ほんとうにどうしようもないくらい気を遣ってしまう。
もちろん勝手に、なのだけど。
そういう自分が物凄く嫌だ。

前の大学でも散々文句を言ってきたのだけど、
学校という場所になった以上、学生もきちんと立っていなければいけないと思っている。
対等な立場とまでは言わないけれど、
責任を持って、主張していい立場だと思うのだ。
そうやって今までやってきたのに、それが全くできない。

本当は、ディスカッションがしたい。
えーほんとにそんなこと思ってんの?とか言いたい。
それって先生が今興味あるだけってことでしょ?
とか言いまくりたい。
やーそれはないわーとか、なんだよーとかガッカリしたい。

いや、きっと言っていいんだと思うのだ。
なのに、自分は言わない。
それが無性に腹が立つ。
こう、本気で土俵に上がっていないような。
腹が据わっていないような。
そんなことを悶々と思っているこの何ヶ月。



2011/07/03

切手



どういうわけか分からないけど、昔から切手がとても好きだった。
友達とサッカーしたり、野球したり、そんなことにはまったく興味がなくて、
ばあちゃんと一緒に朝早くから畑に出たり、木を植えたり、野菜の種を蒔くことの方が
よっぽど楽しかった。

切手がいつから好きで、しかも何がきっかけかは忘れてしまったけど、
じいちゃんの書斎に忍びこんでは、昔の封書に貼られている
なんともきれいな切手を見ることがとても好きだった。

あの小さい四角の中に、なんともいえない世界が広がっているというか、
ロマンがあるというか。
そんなことは当時思っていたかは分からないけど、
今はそう思うのだ。
郵便局に行けば、記念切手の一年の発売日の表があって、
発売当日になれば、小銭を握って郵便局に走った。

切手のアルバムみたいなものもきちんと作っていて、
昔と今の少し違ったデザイン、例えば、数字が少し違っていたり、色が変更になっていたり、を横に並べたりして、
自分の宝物だった。
そういう小さな宝物を、こっそり持っていたりして、
学校の友だちには一言も教えなかった。
自分だけの秘め事にしていた。

中学校に入って野球部に入部し(今でも野球は大嫌いだ)、
嫌いなくせにめちゃくちゃ練習を頑張ったり、試合に負けて皆で泣いたり、
鬼コーチに怯えたり、そんな素敵な青春を過ごしているうちに、
あの切手のアルバムはどこかへしまってしまったのだと思う。
それがどこにあるのか、今でも思い出せないけど、
やっぱり、切手は自分にとっての花の蜜のような時間だったなあと思い出す。

手紙を書く時は今でも切手も選ぶけど、
あの時と比べたら全然見なくなったと思った。

今日ふいに郵便局のHPで調べ物をしていたとき、
ページの一角に記念切手がオンラインで買えることを知った。
小銭を持って走らなくても、今はこうやって買えるのかと、
あー時代は進んでいるんだとかそんなことを思いながら、
記念切手が発売される一週間前からドキドキしていた、そんな夜を思い出した。

やっぱり今でも切手は好きだと思う。
そして、やっぱり小銭を握って走ってよかったと思う。