僕は今日まで幸せな街で暮らしてきた。
幸町って住所が好きだった。
番地も、夕方の風景も、とても気に入っていた。
この家に引っ越して約4年、この街に来て6年。
初めてこの街に来た時、大きな梅の木の前に一軒家のスタバがあるその佇まいを見て、
この街に住もうと、絶対そうしようと決めたのだ。
僕はとてもこの街が好きだった。
「街の木」に指定されているのが金木犀というところも好きだった。
なんだか開けた駅前が気に入っていた。
少しダサくて、少し上品なところも好きだった。
帰り道にある、チェーン店じゃない弁当屋を応援していた。
白い制服をチャッキと着て、おじさんがもくもくと作っている、
飾り気のないケーキ屋が物凄く好きだった。
買い物袋を下げて家に帰ることがとてもうれしかった。
春も夏も秋も冬も、
僕はこの街で幸せに暮らした。
今日、僕はここを出る。
この部屋はダンボールで埋まっている。
違う街、少し広くなった部屋。
耳の奥で今までのことがふくらんだり縮んだりする。
すって はく。
今日、新しい街へゆく。
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