2012/03/04

きっとこの桜は押し花になるんだと思った


黄色や白い日だったと思う。
僕はベンチで弁当とパンを持っていた。
透明なプラスチックのパックに入っていて、
御祝いだとか、そういう言葉を書いていた。
二種類か三種類か、
小さいパンが入っていた。
入学式で貰ったお祝いのパン。なんでパンだろうと思いながら、
ベンチに座って、黄色や白の日差しのなかで、
少し暖まり始めた僕は半透明になりつつあった。

これから大丈夫かなあとそんなことを思った。
勢いで来てしまったことを少し後悔もして、
どんな気持ちか忘れたけど、
分からない気持を強く奥歯で噛んでいた。

入学式で貰ったよく分からない冊子を開いたと思う。
授業の名前が載っていて、それがまたよく分からなくて、
遠いところへ来てしまったなあとぼんやり思った。

そこは公園で、
親子が遊んでいてキャッキャと聞こえた。

パンは少しかじって、またパックに戻した。
少し疲れていた。
前の学校のことを思って、さっきの入学式のことを思った。
レモンティーを飲んだ。リプトンだ。
少し足を伸ばして、ベンチに浅く座り、身を大きく傾けた。

桜が満開だった。
風が吹くと雪のように散った。
膝の上にひらきっぱなしの冊子にも落ちてきた。
そのまま冊子を閉じて、きっとこの桜は押し花になるんだと思った。

大きな地震が起きたすぐ後の、小さな入学式だった。
社会がぐらぐら揺れていた。
きっと何もかも受け止め切れなかったからだ。

さて、と立ち上がり、
近くのゴミ箱にごめんと言ってパンを捨てた。
祝の字が見えた。

黄色や白い一日だった。
始まりの一日だった。
桜が満開だった。


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