朝四時がこわかった。
夕方六時と
夜の十一時がこわかった。
家の中が、駄目になる時間。
日々を繰り返すように、それは必ずやってきた、
あのこわい時間群。
こわい こわい うえーん
泣いたのはもう二十年も前のこと。
今はそんなわけにはいかない。
体を張って、守るものがあるのだ。
家族を、僕の中にある、少し浮いた家族像を、僕は守りに実家へ帰った。
おかしい と思ったのは、
祖父が死んだとき。
あのとき、祖母が変わった。
行かなければ と思ったのは、
二月の終わりのこと。
夜中に掛かってきた電話の向こうで、父親は意味不明なことを叫んでいた。
家族が壊れてしまう。
そんな不安を抱きながら、冬が事切れる少し前、帰路についた。
朝の四時
壁を叩く音がする。
何かをつぶやく声が聞こえる。
玄関が開く。雨の音が強くなった。
祖母が雨の中を出て行った。
僕は追いかける。
連れ戻したとき、祖母の手は震えていた。
妄想の中で、
そしてその中にある怒りの中で、祖母は毎日を過ごしている。
人の家で暴れるため、迎えに来てくれと電話がきた。
祖母を抱きしめながら、僕は何度も何度も頭を下げる。
休日のこと
そんな祖母をやっとのことで連れ戻ったら、
父親が冷蔵庫の前で変になっていた。
死んだ魚のような目をしていた。
そこへ祖母が来たために、
事態は悪化する一方で。
口論になり、互いに掴み合う。
祖母を守ることにした。
何度も父親を投げ飛ばした。
倒れてぶつけた手から血が出ていた。
ごめん と思いながら、祖母に手をあげようとすれば、何度も繰り返した。
それでも、僕の家族なのだ。
かけがえの無い、家族なのだ。
一ヶ月余りの時間。
前半は吐き気のするような日々だった。
少し光の見えそうになった、三月終わり。
いつの間にか春だった。
周りの景色はさくら色になり、
日の暖かさも変わっていた。
毎日、ほとんどの時間を祖母と過ごし、
以前の優しい祖母から確実に変わりゆくその姿を見たこと。
決していいことではないが、
それでも祖母はただ一人。
山の草花の名前も、編み物も、ことばも、優しさも
今僕の中に残っている大切なことを教えてくれたのは祖母だった。
徳島でのこの生活は素晴らしい時間だったと心から思う。
春は切ない始まりだった。
0 件のコメント:
コメントを投稿