2009/11/28

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背中が重い。
きっと罪悪感がこのまな板の体の上で調理されているのだろう。
本当に厄介だ。
罪悪感というものは。


世界は温かい、と自分のことを形容してくれる人がいる。
ありがたいと思う。
だけど、いつも温かいだけではいられない。
この背中のだるさはしばしば。
叫びたくなったり、
投げつけたくなることもある。
なにもつくれないこともよくある。


そもそも、気づけば何かをつくり始めたとき、
そこにあったのは、どこにも打ち明けられない怒りだとか、不安だとか、
苦しさだとか、そういうものだった。
何かを残すことで、いつの日か誰かの目に映ったとき、
お前もどうか、苦しんでください。
そう思っていた。
お前 なんて、誰に向けているのか、どこに向かっているのか分からなかったけれど。
ただ漠然とした、 若い頃の世界 なのかもしれない、と今思う。


17の頃、
僕は自分が同性愛者であると、諦めました。
それまで、微かな希望みたいなものを信じていて、
いつか、治るのだろう と思っていた。
小学校が終わった。
中学生になればきっと治っている。
中学校が終わった。
高校生になれば、きっと、きっと治っているんだ。


高校生になった。    もう、思えなくなった。
僕は自分を認めたくない。
こわいこわい。
なんてこわいんだろう。
これから待っている色々なこと。
人に嘘をつくこと。
社会に出たら僕はどうなるのだろう。
差別はあるだろうか。
最後はひとり死ぬのだろうか。
きっとたくさんの質問が待っている。
彼女は?
結婚は?
どんな恋愛してるの?
子供は?
子供。子供、ほしいと思っていた。
名前、そう、名前だって、いつかノートに書いてたっけ。
家族。
皆、家族をつくるんだろう。
僕の家族。
ここにいる家族。
新しい家族。
ない。どうしよう。ない。
みんなに嘘をついている。
いつだって嘘をついている。
笑っている。
僕は自分を笑っている。
ゲイは気持ち悪いよなーって今聞こえた。
後ろから聞こえた。
どうしよう。
ばれたのだろうか。
でも違う。
だってまだ自分を認めていない。
違う。
笑おう。
声を出して。
笑おう。そうしたら、きっと僕はゲイじゃない。
ははは
ははは
よかった。笑えた。
みんなと同じように。
さっき笑った。
お前さっき笑った。
自分のこと笑ったろ。
お前さっき笑ったろ。
ははは
今度はお前を笑うよ
ははは
こわい。
どうしよう。
今また聞こえた。
先生、僕は尊敬していました。
でも今言った。
女の子と言ってた。
聞いてしまった。
男同士だって。こわいよなーって
笑った
崩れた。
ここが崩れた。
俺、こわい。
先生、僕はもう行き場所がない。
書道をくれたぼくの先生。
ここに居場所があったぼくの先生。
そうか、
廊下。
渡り廊下に行こう。
あそこはいい夕日が見れるんだ。
飛行機雲もある。
そうだ、今夕方だもん。
救われる、夕方だもん。
静かに出れば、何も思われない。
変に思わない。
後輩が来た。
隣に座った。
こっちを見てる。
女の子。
何してるのか聞かれた。
なにも。
変なの。でも、ここに居よう。
なんで。どっかいけ。
ふふ
まあいいや。
何見てるの。
夕日。
昨日もいた。
うん。
お前も昨日も来た。
ふふ
飛行機雲がみえる。
ほんとだ。
先輩は変わってる。
あ、そう。
変だ。
そうだね。変かもな。
でも居心地がいいよ。
どうも。
明日もここに来るの
さあ。
ふふ
体が重い。
背中が痛い。
全部吐いてしまいたい。
分からないけど、筆を持とう。
墨は黒い。
黒い。
まぶしくない。
思い切り叩き付ける。
壁、墨だらけになった。
服も、墨だらけ。
でも、字を書いている。
字を書けている。
紙に言葉が埋まる。
気持ちはどこにある。
言葉は埋まる。ここにある。
気持ちはどこにある。
ここにあった。
階段の一番上。
響くところ。
そこにいる。
学ランを着た誰かが来る。
またここにいた。
うん。
探した。
うん。ごめん。
ここにいると思った。
うん。
同じところ。
女の子がここで泣いた。
同じところ。
ちょっとでいいから、後ろから抱きしめて。
でも。
そしたら諦める。
うん。
あ、
走ってどっか行った。
同じところ。
追いかけなかった。
同じところ。
そこにいる。
書くことがあった。
苦しいほどに、
書くことがあった。
言えないから
書く
誰も知らない。
誰にも言えない。
書く。
核心を抜いて
真ん中の空いたことを
毎日書く
だって誰も知らない。
文字は僕の抜け殻だ
どうか 助けてください
どうか 知ってください


19の頃
あんたは こわいわ
 知ってる。
 自分もこわい。
なにが悪かったん?
育て方?
どこで間違ったんだろ。
 自分もこわい。
 知ってる。
 だけど、母は悪くない。
 ごめん。
 悪くない。
何も言えない。
下を向く。
手を握りしめる。
ごめん と思う。
涙が出る。


24の頃
背中が痛い。
知らなかった僕の友達。
こんにちは。
僕は 僕です。






1 件のコメント:

  1. 世界中にたくさんの人がいる。

    他人の目は恐ろしい。

    でも、僕は僕でいいんだよ。

    何を言われたって自信を持って僕は僕です、と言えばいいと思う。

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