2009/09/26

ある日 長野



中山と長野へ行った。
旅は突然始まってもいいのだ。
行き先が決まったのもチケットを取ったのも当日で、
とりあえず服何枚かと、パンツ靴下くらい持ってれば十分だ。
そんなに大きくない荷物を持って、僕らはバスに乗り込んだ。


一度休憩があって、(そこは山梨だったらしく)桃とバニラが半々のソフトクリームを食べたけれど、
この旅の中で印象に残っているのだから、やっぱりおいしくなかったと思う。




長野の松本に着き、とりあえずホテルを探してみた。
それぞれ別の目星いところに電話し、あっという間に決まった。
夜ご飯を食べに、本で見つけたしっとりした店に行き、感じのいい店員さんで、ご飯もおいしかった。
その店の上から聞こえてくる、コスプレイベントのアニメソングも、
この店の音楽をきっちり掻き消していて、とても趣があった。


二泊三日の日程で、次の日の朝、安曇野へ向かった。
天気予報通りきちんと雨が降っていて途方に暮れ、自信のない車の運転をすべく、レンタカー。
旅の目的でもある、nagiという器の店へ向かう。


それはもう驚きの体験だった。森の中だろうな、とは予想していたけど、ド・森だった。
砂利道で車一台やっと通るくらいで、雨のせいで視界も悪く、
さっきも書いたように運転に自信のない僕なのだから、泣きそうになった。
そしてそんなド森の中を迷った。


曲がり角の向こうに店がないか、中山が走って確認してくれたんだけど、雨の森の中を駆け抜ける姿は予想よりも断然おもしろかった。




nagiの店は美しかった。一つだけ佇んでいて、中は白と灰色と黒髪の主人。
窓からは雨降りの森と、雨を受けるたらいが見えた。はっとする光景はああいうものだろう。
心から感動して、しばらくの間、運転の恐怖はどこかへ行った。
主人の母親から受け継がれた作家、家族で大切にしていてそれが日常の中にうまく埋まったり、
出っ張ったりしているんだろうと思った。次もきっと訪れる。
nagiは美しかったから。




次の日、自転車を借りて安曇野散策。
とてもいい天気に恵まれて、
電動機付き自転車と麦藁帽子にも恵まれて、
出発した。
後ろから見る中山はなんだかおもしろくて、なんだか微笑ましかった。
文明の進歩というのは人の力までをも削ぎ落とす。一漕ぎでビューン、その次はシューン。


絵本美術館にふと立ち寄って、この度の最大の山場を迎えた。
期待しなかった分、この場所の素晴らしさにもう言葉もなく。


展示ももちろん良かったけれど、森の中で飲む紅茶は格別だった。(入館すれば紅茶か珈琲またはジュースが飲めるのだ)
中山は確かりんごジュース、自分は紅茶をいただいた。


そんなに言葉を交わすでもなく、
森を見ていたり雲を見てみたり、その辺を飛んでいるトンボとか、虫を見てみたり。
今、幸せだと思った。


夏が終わったことは薄々気づいていたけど、
秋が来たことをこんなに意識したのは今年始めてで、
それをこの長野で、この森の中で、しかも中山と共有したことはとても良かった。




とても長いものになってしまったけど
唐突に終わりにする。


外で秋の虫が鳴いている。
夜はもう更けた。










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